(第118号) ~張り子の伝統技能を受け継ぐ~ 三四呂人形  (平成9年4月1日号)

三四呂人形
 三四呂【みよろ】人形は、三島出身の人形作家の野口三四郎(明治34年~昭和12年)が創作した芸術人形です。作品の題材の多くはふるさと三島と子供に求めています。素朴で、愛らしい人形として評価を受け、代表作の「水辺興談【きょうだん】」は、人形芸術院主催の「総合人形芸術展」で最高賞を獲得しています。

 三四呂人形の製作技法は日本の伝統的製作方法の張り子です。まず、題材のスケッチをしてから木型を彫刻して形を作ります。木型は人形の胴体、頭、腕、足、髪、鼻など体の各部ごと、別々に作り、動きをともなう人形のように複雑になればなるほど、木型の数は増えています。これに和紙を重ね張りします。和紙が乾燥したら割って木型から取り外し、各部を合体させ、再び和紙を張ります。この時点で着彩し、顔の表情を描いて完成させた作品もありますが、胡粉【ごふん】(顔料)を塗ってから、柔らかな色の出る日本絵の具で着彩した作品が多く見られます。

 三四郎は張り子の技法を取り入れること、和紙を使うことなどを、日本の各地で見られるだるま作りや張り子の郷土玩具からヒントを得て、自分の創作人形作りに活かしたといわれています。三四呂人形の魅力である「軽み」、「柔らかみ」は、張り子であることや和紙を使用したことから表現できたものと思います。

 原作者三四郎没後の戦後になってから、三島市内の有志が集い、三四呂人形の複製人形を、素焼きの陶器で基礎を作り、これに和紙を張って着彩し、郷土民芸品として販売していましたが、評判の良い郷土みやげとなっていました。しかし、原作品に見られたような「軽み」、「柔らかみ」は、なかなか表現できなかったようです。

 三島の未来を背負う子供たちに三四郎のこと、三四呂人形のこと、伝統的な張り子の製作技法のことなどを伝えたいものと、郷土館では研究を進めています。
(広報みしま 平成9年4月1日号掲載記事)