(第271号)作品に見る富士山 (平成22年12月1日号)

 現在開催中(平成二十二年十二月十九日から平成二十三年二月二十七日)の富士・沼津・三島三市博物館共同企画展「わがまちからの富士山~三市対抗富士自慢~」に併せ、富士山を表現した芸術作品を紹介します。

 三島から望む富士山は北西に位置し、宝永四年(一七〇七)に噴火した宝永噴火口がちょうど正面に見えるのが特徴です。  

 三島から仰ぎ見る富士山の姿と街中を流れる清流は、古来より多くの作家によってさまざまな形に表現されてきました。その幾つかを紹介します。

東海道五十三次之内 三島  

東海道十二 五十三次之内三嶋 (蔦屋版)
東海道十二 五十三次之内三嶋 (蔦屋版)

 初代歌川広重の有名な東海道五十三次シリーズのひとつです。富士山の描かれているのは有田屋版と蔦屋版という、いずれも小型版の浮世絵で、三島宿の遠景に象徴的な富士山を見ることができます。  

 東海道五十三次シリーズでは枠をはみ出して描かれた富士山(原宿)や、左富士(吉原宿)など有名ですが、残念ながら三島では富士山より三嶋大社の鳥居のほうがテーマとして多く描かれています。

朝焼けの富士  

朝焼けの富士

 三島出身の日本画家・下田舜堂(一八九九~一九八九)により描かれた作品です。箱根西坂入口付近から富士山に向って描かれたもので、三島市内が朝霧に包まれている様子が分かります。また、昭和二十年から三十年代初めころまでの民家の姿や松並木付近の様子なども伝えています。画面中央の富士山は、冒頭でも触れたように宝永噴火口が正面に見え、三島からの富士山を写実的に描いた貴重な作品です。

三四呂人形「JAPAN」  

三四呂人形「Japan」

 三四呂人形は、三島出身の人形作家・野口三四郎(一九〇一~一九三七)が制作した張子人形です。  

 この作品は背景に富士山が配されており、傘を差した和服の女性と侍姿の男性が立っています。外国から来た観光客向けに当時の日本のイメージであった「フジヤマ」「ゲイシャ(芸者)ガール」「サムライ」などを意識して制作されたものではないかと考えられます。  
【平成22年 広報みしま 12月1日号 掲載記事】