三島の歌碑・句碑7 富士のふもと 廻り尽さで 老いにけり  ―連水―  (平成21年7月1日号)

 この句は、伊豆佐野に生まれ、江戸末期から明治初期にかけて活躍した滝の本連水(れんすい・1832~1898)が、百首の富士を詠んだ『雲霧集(くもきりしゅう)』の中の一句です。

 滝の本連水は本名を勝俣猶右衛門(かつまたなおえもん)といい、村人の人望厚い名主でした。また、伊豆の豪農で邸内に蓑毛(みのも)の滝があり、滝の本という雅号(がごう)はこれに由来しています。

 連水の師、種玉庵連山(しゅぎょくあんれんざん)は沼津に「俳関」の額を掲げ、東海道を往来する俳人は、俳諧(はいかい)の関所として必ずここに立ち寄りました。後に連山は俳関の印章と額を連水に贈り、「俳関」は伊豆佐野に移りました。

 連水邸から富士を眺めると、「廻り尽くさで(尽くせず)」に込められた、連水の尽きることのない富士への思いが感じられます。

連水句碑(伊豆佐野・勝俣家門前)
▲連水句碑(伊豆佐野・勝俣家門前)

【広報みしま 平成21年7月1日号掲載記事】