歴史の小箱
(第1号) 夫婦和合の塞の神(昭和62年7月1日号)
郷土資料館の玄関口に入館者をお迎えするように立っている双体石神像があります。これが塞の神です。三島では「サイノカミサン (セャーノカミサン)」と親しみをこめて呼んでいます。
かつては、どこの村にもあって人々の信仰を集めていました。今でも伊豆佐野あたりは「サイノカミの里」といわれるほど、ていねいにお祭りをしています。サイノカミ信仰は、県東部における民間信仰の最たるものでしょう。
サイノカミには塞の神という字を当てて解釈することが一般的です。村の出入口に立て、邪霊悪鬼の侵入を塞(さえ)ぎるのだといいます。「日本書記」には、岐神(ふなどのかみ=道路の神)と書かれ、「道祖神」解釈の起源ともなっているものです。
郷土資料館にある塞の神は上沢地にあったもので、双体、浮き彫り。石像の上部にひさしをつけた屋根があり、背中は丸味を帯びています。双体であることから男女神像と考えられ、市内にはこの石像のほか佐野にあるだけの珍しいものです。
こうした男女神像は、踊る道祖神、抱擁する道祖神などさまぎまな形があり、三島以北、山梨・長野両県に多く見られます。今では、信州の観光コースの一つにもなっているようです。男女神像であることから、夫婦和合の神とする信仰も多く、また、子どもの守り神とする地域も広くあります。小正月のドンドン焼きは子どもと塞の神が主役で、燃えさかる火の中に塞の神が投げ入れられたりもしました。子どもの身代わりとなって邪鬼を追い払ってくれるのでしょう。
(広報みしま 昭和62年7月1日号掲載記事)