三島市食育基本条例を制定しました

平成21年三島市議会2月定例会において三島市食育基本条例(案)が可決され、平成21年4月1日から施行しています。  
 静岡県内では初めての食育を中心とする条例となります。

食育基本条例を制定する理由

 食育は、親から子へ、生きる上での基本として伝えていくものです。
 しかし、ライフスタイルの変化や食の欧米化が進み、食の大切さが薄れ、食生活の乱れや食の安全性等による心身の健康への影響が問題となっており、健全な食生活を目指し、食のあり方を見直すことが求められています。
 このため、三島市では、食育を行政の重要課題に位置付け、食育先進都市を目指し、行政の責務として、あらゆる世代や生活の場面の中で、食育を総合的、計画的に進めていくため、その基本的な指針として条例を制定しました。

目的

 市民一人ひとりが楽しく食を学び、健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことができるよう、食育を総合的、計画的に推進し、健康で文化的な生活の実現に寄与することを目的としています。

内容

 三島市が食育を進める上でのポイントとして、「1 健康」、「2 豊かな心」、「3 食の安全」、「4 地域の食や文化」、「5 環境」、「6 食育への理解」の6つをテーマとした基本理念を定めるとともに、行政の責務や市民、事業者などの役割を明確にし、6つのテーマに沿って取り組む基本的な施策を定めました。

(6つの基本的施策)

  1. 健康な体を保つための取組
  2. 豊かな心を育むための取組
  3. 食品の安全性等の確保への取組
  4. 食文化を守り育てるための取組
  5. 環境を未来に引き継ぐための取組
  6. 食育推進活動の展開

三島市食育基本条例の概念図(PDF形式)はこちら

県内では初めてとなります

 食育推進条例や食のまちづくり条例など、食育を中心とする条例は、全国でも珍しく、静岡県内の自治体では初めてとなります。

三島市食育基本条例の全文

三島市食育基本条例
平成21年3月24日
条例第10号

〔目次〕
前文
第1章 総則(第1条-第8条)
第2章 食育基本計画(第9条)
第3章 基本的施策(第10条-第15条)
第4章 推進体制(第16条)
附則 


前文 食は命の源であり、人が生きていくためには欠かせないものである。
私たちのまち三島市においては、市民が富士の恵みの清らかな水や箱根西麓に代表されるおいしい野菜など、豊かな自然や風土に適した食を基本に生活を営みながら、郷土の食文化を守り育ててきた。
しかし、近年、社会情勢が著しく変化し、栄養の偏り、不規則な食事等に起因する生活習慣病等の増加、新たな食の安全上の問題、食の海外依存の問題、伝統的な食文化の衰退、食料の生産及び消費に伴う環境への負荷など、様々な問題が生じている。
こうした食をめぐる環境の変化の中で市民が生涯にわたって生き生きとしあわせに暮らすためには、一人一人が食育を推進し、自らの食について考える習慣や食を選択する判断力を身につけ、健全な食生活を実践することが重要である。特に子どもたちに対する食育は、健全な心と身体を培い、豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。 ここに本市は、食育についての基本理念を明らかにし、市民、事業者等との協働により、あらゆる機会及び場所を利用して、食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。
第1章「総則」
第1条
(目的)
この条例は、食育に関し、基本理念を定め、市の責務、市民の役割等を明らかにするとともに、食育に関する施策の基本となる事項を定めることにより、市民一人一人が食を楽しく学び、健全な心身を培い、及び豊かな人間性をはぐくむことができるよう、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来にわたる健康で文化的な生活の実現に寄与することを目的とする。
第2条
(定義)
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。
(1) 食育 様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることをいう。

(2) 教育関係者等 教育並びに保育、介護その他の社会福祉、医療及び保健(以下「教育等」という。)に関する職務に従事する者並びに教育等に関する関係機関及び関係団体をいう。 

(3) 農業者等 農業者及び農業に関する団体をいう。
(4) 食品関連事業者等 食品の製造、加工、流通、販売又は食事の提供を行う事業者及びその組織する団体をいう。 
第3条
(基本理念)
食育は、食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたって健全な食生活を実現することにより、市民の健康の増進と豊かな人間形成に資することを旨として行われるものとする。
2 食育の推進に当たっては、市民の食生活が自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動に支えられていることについて感謝の念や理解が深まるよう配慮されるものとする。
3 食育は、食品の安全性をはじめとする食に関する幅広い情報の提供等が、食に関する知識と理解を深め、市民の適切な食生活の実践に資することを旨として、国、県及び関係機関と連携しながら行われるものとする。
4 食育は、日本の伝統的な食文化、地域の特性を生かした食生活等に配慮するとともに、食料の生産者と消費者との交流等を図ることにより、地域の農産物等への理解が深められ、地域の活性化に資するよう推進されるものとする。
5 食育は、自然を大切にする心がはぐくまれるよう行われるとともに、食料の生産から消費に至る過程における環境への負荷について知識を深め、環境に配慮した食生活を営むことにより、地球環境の保全に寄与するよう推進されるものとする。
6 食育は、家庭、地域その他のあらゆる機会及び場所を利用して食に関する様々な体験活動を行うとともに、自ら食育の推進のための活動を実践することにより、食に関する理解を深めることを旨として行われるものとする。
第4条
(市の責務)
市は、前条に定める食育に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。
2 市は、食育の推進に当たっては、地域の特性を生かすとともに、国及び他の地方公共団体と連携し広域的な推進に努めるものとする。
3 市は、市民、教育関係者等、農業者等及び食品関連事業者等との協働により、食育の推進に取り組むよう努めるものとする。
第5条
(市民等の役割)
市民は、食に関する知識及び適切な判断力を養うよう努めるものとする。
2 市民は、家庭、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、市が実施する食育の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
3 父母その他の子どもの保護者は、家庭が食育において重要な役割を有していることを認識し、食を通じて子どもたちが健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむことができるようにするため、必要な指導等を行うよう努めるものとする。
第6条
(教育関係者等の役割)
教育関係者等は、基本理念にのっとり、教育等に関する分野において積極的に食育を推進するよう努めるとともに、他の者の行う食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。
2 食物、栄養等に関する教育関係者等は、前項に規定する食育の推進に当たっては、専門的知識を生かし、主導的な役割を果たすよう努めるものとする。
第7条
(農業者等の役割)
農業者等は、基本理念にのっとり、農業に関する様々な体験の機会の提供及び消費者との積極的な交流を図ることにより、自然の恩恵及び農業の重要性について市民の関心及び理解が深まるよう努めるとともに、教育関係者等と相互に連携し食育の推進に関する活動を行うよう努めるものとする。
2 農業者等は、基本理念にのっとり、安全性が確保され、安心して消費できる食料の生産及び供給に努めるものとする。
第8条
(食品関連事業者等の役割)
食品関連事業者等は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、自主的かつ積極的に食育の推進に自ら努めるとともに、市が実施する食育の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 食品関連事業者等は、基本理念にのっとり、安全性の高い食品の提供に努めるとともに、市民への食に関する幅広い情報提供を行うよう努めるものとする。
第2章「食育基本計画」
第9条
(基本計画)
市長は、食育基本法(平成17年法律第63号。以下「法」という。)第18条第1項の規定により、三島市食育基本計画(以下「基本計画」という。)を作成するものとする。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 食育の推進に関する基本方針
(2) 食育の推進に関する目標
(3) 食育の推進に関する施策
(4) 前3号に掲げるもののほか、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な事項
第3章「基本的施策」  
第10条
(健康な体を保つための取組の推進)
市は、健全な食生活による心身の健康の維持又は増進を図るため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 食及び健康増進に関する市民の理解を深めるために講演会、講座その他必要な情報提供等を実施すること。

(2) 子どもの成長や発達段階に応じた栄養指導、生活習慣病を予防するための食生活の指導その他の健康管理に関する指導、教育等の充実を図ること。
第11条
(豊かな心を育むための取組の推進)
市は、子どもの豊かな心をはぐくむため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 親子が食事についての望ましい習慣を学びながら食を楽しむことができる機会を提供すること。

(2) 農業体験等を通じて、子どもの食に関する理解を促進すること。
(3) 小学校、中学校、幼稚園及び保育所(以下「学校等」という。)における食育に関する指導体制の整備を図ること。
第12条
(食品の安全性が確保されるための取組の推進)
市は、食品の安全性及び信頼性が確保されるとともに、市民が食に関する適切な判断力を養うようにするため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 農業者等及び食品関連事業者等が、法令の遵守の徹底を図ることができるよう、必要に応じて食品の安全に関する情報を正確かつ迅速に提供すること。

(2) 安全な食料の生産を担う人材の育成が図られるようにするための支援を行うこと。

(3) 食品表示の見方その他の食品に関する知識及び理解を深めるための市民への情報提供並びに消費者団体の支援を行うこと。
第13条
(食文化を守り、育てるための取組の推進)
市は、地域の食文化の継承及び農産物の地産地消(地域で生産された農産物をその地域で消費することをいう。)を推進するため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 伝統的な行事や作法と結びついた食文化、地域の特色ある食文化等の啓発及び普及を推進すること。

(2) 地域で生産された農産物の学校給食等における利用その他の地域内における消費の促進を図ること。
第14条
(環境を未来に引き継ぐための取組の推進)
市は、循環型社会の実現が図られるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 学校等及び地域において、食に関する環境教育に取り組むこと。
(2) 環境と調和のとれた農業を普及させるための支援を行うこと。
(3) 食品廃棄物の発生の抑制及び再生利用等の環境に配慮した食生活の普及を図ること。
第15条
(食育推進運動の展開)
市は、食育の推進に関する活動(以下「食育推進活動」という。)を、市民、教育関係者等、農業者等、食品関連事業者等その他の食育に関する関係者(以下「食育関係者」という。)との連携により進めるため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 食育の推進に関する普及啓発を図るための行事の実施及び重点的かつ効果的に食育推進活動を推進するための期間を指定すること。

(2) 食育の推進に関する専門的知識を有する者の養成及びその活用等を図ること。

(3) 食育の推進に関する活動を自発的に行う食育関係者相互間の情報及び意見の交換が促進されるよう市が必要と認める支援を行うこと。

(4) 食育推進活動に携わるボランティアとの連携協力を図りながら、その活動の充実が図られるよう支援を行うこと。
第4章 「推進体制」
第16条
(推進会議の設置)
市は、法第33条第1項の規定に基づき、三島市食育推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項について審議する。
(1) 基本計画の策定及び実施に関すること。
(2) その他食育の推進のために市長が必要と認める事項
3 推進会議は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する20人以内の委員で組織する。
(1) 学識経験者
(2) 関係団体等の代表
(3) 教育関係者等
(4) 市民
(5) その他市長が必要と認める者
4 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 推進会議に会長及び副会長それぞれ1人を置き、委員の互選によりこれを定める。
6 推進会議の運営に関し必要な事項は、規則で定める。
附則 この条例は、平成21年4月1日から施行する。


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