歴史の小箱
(第12号) 古代のロマンを秘めた 土偶 (昭和63年6月1日号)
古代のロマンを秘めた 土偶一個の土偶の発見、そしてそれが今日まで保管されてきた経過とこの土偶(写真)の実体について、まず報告いたします。
発見された地点は、奥山遺跡(三島市玉沢奥山)でした。地元の人の手により採集され、坂小学校に持ち込まれました。しばらく学校に保管されていましたが、昭和46年郷土館開館に伴い、展示のために移管されたものです。
土偶は、子供の握りこぶし位の大きさの素炊きです。首から折れていて下体部分は無く、高さは6.5cm。顔は巾も長さも6cmの丸顔。後方に出っ張った頭部は、長い孝を結って、巻きあげたように見えます。切れ長でつりあがった目、その両目にかかるように描かれた二本の線は入れ墨と思われます。
考古学上、土偶は縄文時代人の精神生活に関する重要な遺物とされ、各地での発掘例の報告がなされています。これらの土偶に共通していることは、ほとんどが女性を型取ったもので、乳房、腰などの女性的な特徴が誇張されていることです。また、どこか一部が欠損して発見される例も多いようです。こうした点から、一般に豊饒生殖を祈るためのものとか、人の災厄の身代わりとしたものではないかなどといわれています。
さて、ところで前記の奥山遺跡出土の土偶は、全国的な土偶報告例とまったく同じような特徴をもっているものと言えます。髪型から女性らしいこと、首から上の部分しか無いことなどの点です。一体三島の純文時代の祖先たちは、この土偶に、何を祈願したものでしょうか。また、欠損して不明の下体部分は、どんな形をしていたものか。特徴のある髪型や顔立ちの意味するものは。しつくり土偶を見ていると、実にさまざまな謎が浮かんできます。
一個の土偶の謎は、壮大な古代のロマンを秘めているようです。
(広報みしま 昭和63年6月1日号掲載記事)
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