歴史の小箱
(第19号) 歳神の宿る聖域を示す 注連飾り (昭和64年1月1日号)
正月に玄関に飾る注連飾リ
三島の伝統的な正月の注連飾りは、稲ワラ、ウラジロ、ユズリハ、ダイダイが基本的材料です。ワラを縄にない、輪に作るところから輪飾りと呼ばれます。輪飾りは玄関飾りとされます。豪華な輪飾りには稲穂も付けられました。正月の象徴でもある注連飾りにワラを使うのは、稲作農民の知恵でしょう。
数ある年中行事のうち正月行事はもっとも重要な行事です。「一年の計は元旦にあり」といわれます。一年の始めである正月は、だれもが身も、心も引き締めて迎えるものです。
正月は正月神(あるいは歳神)を迎える行事だと言われます。昔は家庭で歳神棚を作り、アキノカタ(恵方のことで、その年によって方角が違う)に向けて歳神迎えの準備をしたものです。こうした正月を迎える準備の方法や歳神棚の作り方から、正月は盆の祖霊迎えと同様の先祖を迎え祭る行事だと考えられてきました。
歳神を迎える準備として、古くは暮れのうちに山から松を切り出し門松を立て、歳神の依り代としていました。依り代とは、歳神が間違いなく目的の家を訪れるための目印となるものです。注連飾りも依り代の役目を果たしましたが、むしろ、注連飾りを付けることによって、その場所が歳神の宿る聖域であることを示していました。注連飾りを家の玄関だけでなく、神棚や篭、井戸、種々の道具にまでも付けたのは、あらゆる物に祖霊の力の宿るのを望んだからでした。
(広報みしま 昭和64年1月1日号掲載記事)
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