(第20号) 寄贈された三四呂人形 (平成元年2月1日号)

 三四呂人形は郷土資料館の看板となる展示品です。若くして、その才能を惜しまれつつ世を去った人形作家・野口三四郎の遺作は、館を訪れるたくさんの人々に感銘を与えてくれます。
 このたび、東本町の瀬川延さんが、三点の三四呂人形を寄贈してくれました。三点はそれぞれ「迎春」「子守け」「つばめ」という題名のついている三四呂人形の優品です。この機会に三点の三四呂人形を改めて紹介します。
 「つぱめ」は手のひらに乗るほどの小さな巣の中で餌を運んで来てくれる親つぱめを待つ三羽の子つばめです。巣に行儀よく並んだ子つばめのかわいらしい姿に作家の子供たちに村する優しさを見る思いがします。
 子供好きだった野口三四郎の一面は「子守り」にも表現されています。背中で眠ってしまい重たくなった赤ん坊。その重たさに耐えながらも愛情いっぱいの表情で子守りする少女。かつての三島には、こうした風景が街の中で見られたものです。やわらかい和紙をそのまま生かして作られた人形には味わいがあり、昔の風景の素朴さが感じられます。三四郎の子供時代の記憶の表現かもしれません。
 「迎春」は、いかにも春をおもわせる羽子板を持つ少女の人形です。あどけない顔の表情、ずんぐりと丸い姿などに、素朴だが何とも言えない可愛らしさがにじみ出ています。三四呂人形の良さが凝縮された人形と言えるでしょう。和紙張り子人形には変わりないのですが、三四郎はこれに漆を塗っています。晩年の作品と伝えられています。こうした試みによって、三四呂人形を成長させようとしたものでしょう。
 現在、郷土資料館の二階では、紹介した三四呂人形とその他の三四呂人形を合わせて展示しています。
(広報みしま 平成元年2月1日号掲載記事)