歴史の小箱
(第113号) ~東海道の旅~ 旅の必携品 (平成9年10月1日号)
今回は東海道の旅の必携品について紹介します。
財布。これが無くては旅はできません。草鞋【わらじ】を買ったり、茶を飲んだり、昼食のそばやうどんを食べたり、宿賃を払ったり、名所旧跡で土産を買ったり、お金の使い方は現代と変わりませんが、旅は出費がつきものでした。財布の形は、小さい書簡【しょかん】やお守りのお札が入るくらいの長方形のものが一般的で、材質には布製、革製のものに好みの意匠【いしょう】を凝らしたさまざまな財布がありました。ちなみに幕末ころの東海道の各宿場での旅籠賃【はたごちん】は約200文、富士川の船賃24文、そば一ぜん16文、大井川の渡し賃が306文でした。(嘉永6年・1853年の旅日記より)
矢立。携帯用の筆入れです。柄【え】の部分が空洞になっていて小型の筆を入れることができ、先端は蓋付【ふたつき】の墨壷【すみつぼ】になっています。道中の日記を付けたり、費用を書き留めたりと、現代のボールペンや万年筆のように旅の必需品でした。
煙草入れ。これは主に男性用の持ち物でした。キセルときざみ煙草の入れ物が一体になっていて、意匠を凝らした象牙の彫り物が根付けとして付けられていました。旅の途中で、ちょっと一服という実用性もありましたが、「粋【いき】」を好んだ男たちのファッションあふれる持ち物だったのでしょう。
日記帳。一生の内に何度もないであろう庶民の伊勢参りや霊場巡りの旅では、日記帳は必携品でした。旅の思い出はもちろん、道中の費用や和歌・俳句などをつづりました。また、旅籠紹介や地図が掲載されている案内の出版も盛んでしたから、これも懐中に入れて出かけています。
最後に旅の衣装。襦袢【じゅばん】・半天・股引【ももひき】・合羽【かっぱ】で、足にはわらじを履き、頭には道中笠という姿でした。
(広報みしま 平成9年10月1日号掲載記事)
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