歴史の小箱
(第112号) ~足利文庫所蔵~ 『永亨9年三島暦』 (平成8年10月1日号)
栃木県足利市にある史跡「足利学校」は日本最古の大学として知られていますが、現在は足利市が復元し、多くの見学者を集め、同市の歴史探訪の目玉となっています。また、古い蔵など史跡周辺の町並みも整備され、趣ある歴史景観を作っています。
足利学校には、多くの書物が残されていますが、その多くは国宝や重要文化財に指定されています。そうした貴重本の中に、わが三島で発行され、関東地域に広く領布されていた三島暦が残されていました。
永亨9年(1437)三島暦は、足利学校所蔵の『周易』古写本(重要文化財)全五冊の内の四冊中に、なんと、本を補強するための裏貼りとして使用されていました。当時としてもきわめて貴重な教科書でしたから、適当な補強用の紙として使用済みの三島暦を利用したものと思われますが、思わぬ形で三島暦が後世に残されたものだと驚かされました。三島暦にとっては、実に幸いな過去の出来事だったといえるでしょう。
三島が暦の町として知られるようになったのは江戸期以前からのことです。当時は京都で版行されていた京暦に対し、関東では三島暦が独自の方法で暦を版行していました。その起源は鎌倉時代くらいに遡ることが出来るであろうと考えられてきました。そうした根拠を求めて、いろいろな文献研究や、現存する三島暦の調査が行われてきましたが、つい近年までは足利学校所蔵の永亨9年暦がもっとも古い三島暦とされました。
さて、残されていた三島暦の状況ですが、残念ながら一年間全ての暦日は残っていませんでした。しかし、これが確かに三島暦であるということが分かる「暦首」(暦の最初の部分)が残り、そこには紛れもなく「三嶋」という文字が読めます。
(広報みしま 平成8年10月1日号掲載記事)
歴史の小箱(1996年度)
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