歴史の小箱
(第350号)市指定文化財箱根田遺跡の祭祀関連遺物(平成29年7月1日号)
今回は、郷土資料館で開催中の企画展(前期)の展示資料から「箱根田遺跡出土祭祀関連遺物」を紹介します。
市内には長い歴史や風土の中で育まれた歴史資料や美術品が多数残されています。これらは地域の歴史や文化を知るうえで重要であり、後世に残していきたい財産です。そのうち特に重要なものは、国、県、市がそれぞれ法令や条例に基づいて文化財に指定し、保存・活用につとめています。
現在、「三島市文化財保護条例」で指定された市の文化財は47件あり、そのうちの1件が「箱根田遺跡出土祭祀関連遺物」です。安久の箱根田遺跡から出土した遺物の中で、祭祀に使われたと想定される合計70点が指定
の対象となっています。
発掘調査は、平成十一年(一九九九年)に商業施設建設に先立って行われました。その結果、流路や倉庫の跡と土器などの遺物約2万点が見つかっています。
発見された流路跡の幅は約12mで、下流部は大場川から狩野川につながり、駿河湾に流れ出たと考えられます。上流部は大場川や御殿川につながると推定され、さらにさかのぼると、伊豆国の国衙 (役所)があったと
いわれる地域に至ります。流路跡の北側には柱穴が見つかり、6棟の倉庫が計画的に設置されていたことが想定されます。流路跡からは、奈良~平安時代のものとわかる土器や木製品が大量に見つかりました。以上の結
果から、箱根田遺跡がある地は、奈良~平安時代、水運を利用した物資の集積、積み替えを行う港(津)として機能していたと
考えられています。
写真1・2は、文化財指定された遺物の一部で、墨で絵や文字が書かれています。1にはひげを生やした男性の顔が2つ描かれていて、2には「奉」の文字が記されています。両方とも流路跡から発見されたもので、罪やけがれをはらう儀式(祭祀 )で用いられ、流路に投じられた道具であると考えられています。これら遺物からは都で行われていた国家的な祭祀の影響や土地の伝統的な祭祀の片りんを読み取ることができ、歴史的に重要な資料といえます。そこで市文化財保護審議委員会で審議が行われ、平成十五年(二〇〇三年)に市教育委員会によって市の文化財に指定されることとなりました。
▲写真1:「人面墨書土器」(右イラストは墨書部分) 高さ39.9cm
▲写真2:「墨書土器」 高さ4.2cm
【広報みしま 平成29年7月1日号掲載記事】
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