歴史の小箱
(第146号) ~布や紙のリサイクル~ 「ボッコ帯と(裂織帯【さきおりおび】)と糸玉」 (平成12年7月1日号)
郷土資料館が収集した衣類の中に数本、手織りの丈夫な帯があります。ごつごつした出来上がりにいかにも手織りの風趣が感じられ、これが不要になったぼろぼろ布を再利用したとは思えないきれいな出来ばえです。
ボッコ帯と呼ばれるこの帯は古くなって着ることの出来なくなった着物を細く裂いてひも状にした布を横糸とし、縦糸に木綿糸を用いて手機【てばた】にかけて織ったものです。
さまざまな色の布を使い、色の取り合わせを考えて織られ、ぼろ布はおしゃれな帯に変身しました。伊達巻【だてまき】(帯の下に締める細帯)に利用した女性もいます。
裂織といわれるこの織物は厚くて丈夫なため漁師や木挽【こび】きなど厳しい労働をする人々の体の保護や防寒用としても使用されていました。
一昔前までは、家族の衣類はその家の主婦やおばあさんが時間をかけて手機【てばた】で布を織り、裁縫【さいほう】して作るのが普通でした。愛情のこもった衣類は、すり切れ穴が空くとツギが当てられ、古くなっても捨てられることなく裂織に利用されたり、座布団生地【ざぶとんきじ】、オシメ、フキン、雑巾あるいは子供のお手玉にと、ぼろぼろになるまで大事に再利用(リサイクル)されました。布は最後まで捨てることのできない貴重品だったのです。
布と同じように糸もまた貴重品でした。裁縫や手機にかけて残った糸も捨てられることなく、糸先三寸(約10cm)あればつないで糸玉にし、手機の横糸などに再利用したものです。
ボッコ帯と糸玉に、昔の人々の暮らしの一端が見えてきます。一片のぼろ布、一本の糸くずでさえ無駄にしないモノを大切に使い切る精神は、モノのあふれる現代に生きる私たちに大事な教訓を残してくれているとは言えないでしょうか。
ボッコ帯と糸玉は郷土資料館2階展示室で見ることができます。
(広報みしま 平成12年7月1日号掲載記事)
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