歴史の小箱
(第144号) ~中郷の夏の象徴~ 「お天王さんの神輿【みこし】」 (平成12年5月1日号)
7月始めの夕暮れ時、三島市の東南にある大場【だいば】神社の境内に、ふんどしにねじりはちまき姿の男衆が数十人集まります。太鼓の音に鼓舞【こぶ】され、掛け声をかけながらお天王さんの神輿【みこし】を担ぎ練りまわります。ムギカラ(麦わら)や藁【わら】が燃やされ、炎に照らされて暴れまわる担ぎ手に向かって周囲から水がかけられます。やがて神輿は神社から飛び出し、大場町内を数時間にわたり練る勇ましい祭です。
中郷のお天王さんは祠【ほこら】を縄で担ぎ棒にしばりつけた神輿に特徴があります。大場の他、中島・梅名・安久で古くから催され、多呂でも子ども神輿として近年復活しました。お天王さんは「牛頭天王【ごずてんのう】」や「スサノオノ命」が祭神とされ勧請【かんじょう】されたものが多く見受けられます。
近年まで7月6日に催されていましたが、勤めを持つ人が増えたため土曜日に催す所が多くなりました。
これらお天王さんの神輿は地域ごとに縛り方に特徴があります。写真の大場の神輿は7本の縄をねじって太くし、祠全体にからげ、勇壮なイメージがあります。中島は縦横に直線的にしばり、すっきりしています。梅名・安久の神輿は細かい編み目で仕立てられています。
昭和30年代までは、梅名橋や大場橋かえあ、神輿が投げ落とされ、担ぎ手達も次々飛び込んで、川の中で練られたものでした。川岸ではムギカラが燃やされ神輿と見物人を赤々と照らしていました。現在は堤防や橋が改修されて高くなり、川に入ることはなくなっています。
一晩練りまわった神輿は神社に戻ると縄が切られ祠が取り出されて、神社前の涼み台の上に置かれ1週間涼ませます。この間、中島や梅名では「天王講」と呼ばれる女衆のオコモリが毎日行われます。
集落を守る祭として、中郷の人々が毎年、楽しみにしている行事です。
(広報みしま 平成12年5月1日号掲載記事)
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