歴史の小箱
(第188号) 門松 ~正月迎えの行事~ (平成16年1月1日号)
お正月といえば門松。昔から会社や官公庁、家の門前に七日間飾られ、お正月らしい華やぎをもたらしていました。
昭和20~30年代にかけて、三嶋大社前、旧東海道の商店街がにぎやかだった頃、正月の久保町(現、中央町)の商店の店先には門松が店ごとに並び、華やかな通りとなっていました。当時、門松一対で500円。久保町の繁栄ぶりが伺えます。もっぱら植木職人や鳶職が頼まれて立てていました。
三島の門松は、東京の門松の仕様を継いでいるようです。節止めで切った真竹を三本立て、周囲を熊笹で囲み松と梅の枝を入れ、ワラをまわして縛るものです。作成する職人によっては真竹にそりを入れ、カンナをかけた門松もありました。大きな会社の門松の背後には、左に男松、右に赤松を立て、立派なものを作ったといいます。
この門松、もともとは正月の神様を迎える依代(よりしろ・神霊を宿すもの)で、正月を迎える大切なものです。 県内でも西部の山間部へ行くと、オトコギとよばれる7~8メートルの杉やヒノキの白木を門松に添えて二本立てる風習があります。男児の健やかな成長を願って立てると地元の人たちはいいます。
この木は「松迎え」といって、11月末頃から吉日を選んで山から切り出し、皮をはいで乾燥させ、暮れの28日に立てるものです。
諏訪大社の御柱や古代人の巨木信仰を想い起こさせる行事です。
長い伝統と信仰があった門松ですが、近年時流におされ、官公庁や商店街から減りつつあります。
(広報みしま 平成16年1月1日号掲載記事)
歴史の小箱(2003年度)
- (第190号) 三四呂(みよろ)人形~張子(はりこ)のおひなさま (平成16年3月1日号)
- (第189号) 荒れた竹林を宝の竹林に~「竹」の新しい活用 (平成16年2月1日号)
- (第188号) 門松 ~正月迎えの行事~ (平成16年1月1日号)
- (第187号) 竹かご職人の道具 (平成15年12月1日号)
- (第186号) 沼津垣 ~箱根の篠竹(しのだけ)で作られた~ (平成15年11月1日号)
- (第185号) 三四呂(みよろ)人形-ハチ公 ~渋谷へ通って作られた~ (平成15年10月1日号)
- (第184号) 「古今伝授とは」 ~古今伝授のまち三島~ (平成15年9月1日号)
- (第183号) 顕長の壺(三ツ谷新田出土) ~浄土を願う信仰~ (平成15年8月1日号)
- (第182号) 人面墨書土器(安久・箱根田遺跡) ~古代の祭祀の跡~ (平成15年7月1日号)
- (第181号) 茅の輪 ~夏越(なごし)の大祓(おおはらえ)~ (平成15年6月1日号)
- (第180号) 北伊豆震災からの復興 ~天皇陛下からの恩賜金~ (平成15年5月1日号)
- (第179号) 昭和初期の女性の人形 ~三四呂人形―パラソルと花子さん~ (平成15年4月1日号)