歴史の小箱
(第46号) 三四呂人形の魅力発見 「張子の新技法」 (平成3年4月1日号)
三島出身の人形作家、野口三四郎が、作品「水辺興淡」で、第一回総合人形芸術展(昭和十一年開催)の最高賞の人形芸術院賞を獲得した時、審査員の有坂與太郎氏は東京日々新聞紙上で三四郎の人形を「かつてない新しい技法と題材が、未来の人形の行くべき道を示教するように思う」と、絶賛の評を贈っています。
この、有坂氏の言う「三四呂の新しい技法と題材」とは何であったのか、今回は、これを主題に三四呂人形の魅力の原点を探って見たいと思います。
ご存知のように、従来、三四呂人形は張子の技法で作られたとされてきました。張子と言えば、伝統的な達磨があり、昔から次のような工程で作られていました。
「木型を作り、これに和紙を重ね張りし、和紙が乾燥したところで割って木型を抜き、割った和紙型(凸)を張り合わせ、ご粉を塗って着色して仕上げる」。
三四呂人形の製作工程も、同じだったのでしょうか。その答えは否です。三四呂人形の張子技法の新しさは、発想の逆転にありました。「木型で原型をしっかり作り石膏で凹型にとワ、和紙はこれに内側から重ね張りし、乾いたところで石膏から外し、取り出した張子を合わせガンピ紙を張り、淡彩を施して仕上げる」。つまり、三四呂張子の場合は、和紙の張り方が伝統的な方法とは逆に、型の内側からの重ね張りでした。こうすることによって、出来上がった張子の肌に原型の持ち味がそのままに現れ、かつ和紙の持つ柔らかな風合いも生かされたからでした。
技法のほか、三四呂の新しさは素朴で、生き生きと遊んでいる子供の姿をテーマにした点にありました。
三四呂人形が作り出す無類に愛らしいメルヘンの世界は、このように生み出されたものです。
(広報みしま 平成3年4月1日号掲載記事)
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