歴史の小箱
(第325号)新規資料(絵図)浮世絵・村絵図(平成27年6月1日号)
はじめに紹介するのは三枚続きの浮世絵、三代歌川豊国画「役者絵 東海道五十三次の内 三島」(図①)で、これは江戸時代後期の作とされています。この中で左から二人目に「おせん」という女性が描かれています。
「おせん」は「恋伝授文武陣立」という人形浄瑠璃の登場人物で、夫のあだ討ちを果たそうとする美人盗賊として描かれています。美女のあだ討ちは大衆に人気の演目だったらしく、明治期まで上演されていました。
また、「吾孺下五十三駅」という歌舞伎の舞台にもおせんは女盗賊として登場しています。
この浮世絵では、旅籠の中と思われる場所で女盗賊である「おせん」が飯盛女(宿駅の旅籠屋で旅行者の寝食の世話をした幕府黙認の遊女)に扮して客らしき者に応対している場面が描かれています。
二点目は、幕末、慶応四年(一八六八)に作成された安久村(現在の三島市安久)の村絵図(図②)です。これは、江戸時代に安久で名主を務めていた杉山家より寄贈された「安久・杉山家文書」の資料のひとつです。
安久は中郷地区南部にあり、函南町と境を接しています。また、大場川に面しているため、たびたび水害に見舞われてきました。杉山家文書の中にも江戸時代の水害の記録が残されています。
昭和に入ると戦争による工事の遅れに見舞われながらも河川改修が行われ、河道が変わりました。この絵図に描かれている大場川と現在の河道と比べると、流路が違っており、ずいぶん蛇行していた様子がわかります。
また、村絵図には神社が三カ所描かれていますが、これらは現在も残る王子神社、諏訪神社、安富神社と推定されます。このように、村絵図は地域の変化したところや、昔のまま変わらないところを知ることができる貴重な資料です。
【広報みしま 平成27年6月1日号掲載記事】
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