歴史の小箱
(第397号)地域の歴史―川原ケ谷―(令和3年6月1日号)
来年の大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」は主人公・北条義時が伊豆出身の豪族ということで、楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。今回はこのドラマに登場する源頼朝とゆかりがある、川原ケ谷地区の歴史
を紹介します。
川原ケ谷は、市街地から東へ向かい新町(しんまち)橋を渡った先に位置する集落です。文献で確認される歴史は古く、平安時代末の治承4年(1180)に源頼朝から三嶋大社に出されたとされる文書内に、「川原谷郷(かわはらがやごう)」として登場しています。古くから東西を往来する街道沿いの集落で、平安時代の延暦
21年(802)、富士山噴火の影響によりそれまで使われていた箱根を迂回する足柄路(あしがらじ)が通行不能となり、三島から川原ケ谷付近を通って芦ノ湖畔に出る箱根路(はこねじ)が開かれて以来、多くの人や物が行き交いました。源頼朝が三嶋大社へ参詣する際にはこの箱根路を通ったとされ、現在「推定平安鎌倉古道」として歴史あるハイキングコースになっています。
また、大場川に近い箱根山の尾根の南端には「川原ケ谷城」と呼ばれる中世の砦(とりで)跡があります。箱根西麓をさらに上った場所には戦国時代に北条氏によって築かれた山中城があるように、三島から箱根へ向
かうルートは軍事上重要な場所であったことがわかります。この川原ケ谷城の城域内と推定されている中にあるのが、願成寺(がんじょうじ)です。前述の推定平安鎌倉古道のルート上にあたります。頼朝が伊豆に配流されていたとき、平家打倒を宿願に三嶋大社へ百日祈願に通っていたと伝わりますが、その時、頼朝が宿所にしていたという伝承のあるお寺です。「願成寺」という寺号は、平家打倒の願いを成就させた頼朝から贈られたと伝わるそうです。また、参道の左右には、市の天然記念物に指定されている樹齢300年以上の一対のクスノ
キがあります。
緑あざやかな今の季節は、歴史ある道を歩きながら往時に思いをはせるにはぴったりですね。
【広報みしま 令和3年6月1日号掲載記事】
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