歴史の小箱
(第81号) ~中米グァテマラの~ 民族衣装 (平成6年3月1日号)
糸機とは、人が糸を紡【つむ】いだり、染めたり、機を織ったりして衣料生活を行うことで、人のくらしの三要素(衣・食・住)の重要な部分を占めるくらしの営みです。
現在も行われている衣の原点とも言える中米グァテマラの衣生活と衣料について紹介したいと思います。
その中で、グァテマラのインディオの女性が身につける衣類の一つ、ウィピール(写真)を紹介します。
ウィピールは女性用の上着で、二つ折りにした布の中央を丸くくりぬいただけの簡単な貫頭衣【かんとうい】です。これにコルテという巻きスカートをはいて、ファハという帯を締め、頭にシンタを巻き付ければ盛装が整います。いずれの衣類も、かぶる、巻くというだけの、実に単純かつ原始的な着付け方法と言えるでしょう。
グァテマラのインディオは、現在でも、華麗、繊細な織物を手作りで生産することで知られていますが、その模様には動物や鳥、空想の動物などが織り込まれるなど、実に様々な意匠【いしょう】がこらされていて、インディオの織物文化の高さを象徴しています。
「高い暦【こよみ】文化(天文学)の発達した地域には、高い織物文化がある」と言われますが、かれらの歴史的な背景に高度な天文観測で知られるマヤ文明を持つことから、そのことが証明されます。
現在のグァテマラでは、かつて行われていた糸紡ぎは既製品の糸の入手に変わり、草木や貝での染色方法は、化学染料に変わるなど、先進国の文明の波が押しよせてはいるものの、原始的な機織【はたお】り機を用いての布作りやその布を使っての民族衣装作りは、未だ盛んに行われているといいます。
特に女性たちの世界では、自分が織った最良の民族衣装を着ることは誇らしいこととされ、部族の伝統の衣料生活が生きています。
(広報みしま 平成6年3月1日号掲載記事)
歴史の小箱(1993年度)
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