歴史の小箱
(第77号) ~竹と生活展資料より~ カニモジリ (平成5年11月1日号)
私たちの祖先たちは、身近にたくさん生えている竹を貴重な生活材料として様々な形で利用してきました。
その一つ、竹製カニモジリは川と人々の生活に関するなつかしい道具といえるでしょう。
口径32cm、奥行50cmの円筒形の籠。籠の口からは奥に向かって口の狭まる27cmのコシタが付いています。コシタは獲物が通過した後に戻れなくなる仕掛け口のことで、これはウナギモジリなどにもかならずある仕掛けです。
カニモジリはコシタを下流に向けて、夕方仕掛けて置き、翌朝取りに行きます。
カニモジリの紐【ひも】を竹竿【たけざお】にゆわえ、その竹が水面に出ないように川底に突き刺し、仕掛けた者だけにしか持ち上げられないように工夫をし、カニンベ(蟹)の餌【えさ】には、匂いの強い鯖【さば】や鰯【いわし】の頭やハラワタ、オカイコ(蚕)のサナギなども入れたものだといいます。
かつて、三島市内の川にも多くの蟹が、生息し、そこでは子供の遊びとして、あるいはカセギの足しとしてなどのカニンベ取りが盛んに行われていたと聞きます。
市内南の境川筋では、つい近年までカニンベ取りをやっていた人の話を聞くことができました。
「カニンベがよく取れたのは蕎麦の花が咲くころだ。一晩で何十枚も取れたカニンベは、富士や甲州(山梨県)方面から来た仲買人に売ったりもした。もちろん、家で打った蕎麦のだし汁にもした。カニンベを臼【うす】ですりつぶし、それをだしにした蕎麦は最高のご馳走【ちそう】だったよ。」
川と人々の親しい生活関係。そして、そこで使われる竹のカニモジリ。今ではなつかしい思い出話となりました。
(広報みしま 平成5年11月1日号掲載記事)
歴史の小箱(1993年度)
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