歴史の小箱
(第58号) 発掘された約500年前の曲げ物 (平成4年4月1日号)
檜【ひのき】や杉の薄い板を曲げて円形や楕円形に作った容器を総称してマゲモノ(曲げ物)と呼んでいます。現在曲げ物で作られているものにはメンパ、ワッパなどと称される弁当箱や、ひしゃく、飯びつ、おぼけ(苧桶)、せいろう(蒸籠)、ふるい(篩)などがあります。
静岡県では、今でも中部の大井川上流地域ではメンパが生産され、また比較的最近まで農家のノラベントウ(野良用の弁当)として愛用されてきました。
この曲げ物が、市内御殿川流域遺跡群の中島西田原遺跡から発掘されました。
形は円形で、直径は約10センチ、高さは5センチの小型食器のよう。曲げ物の枠と底には板材を使用。曲げた板を桜の木の皮を使ってつなぎとめるなど、製作法は現在と変わりないようです。
御殿川出土の曲げ物は、何のために使われた器でしょうか。まず、非常に小型である点が気になります。日常の食器にしては小さすぎます。
しかし、容器を発見した調査員の意見を伺ってみましたところ、「生活食器の一種でしょう」という答えでした。つまり、食器として日常生活に使われた道具であるらしいとのことです。
ところで、同じ遺跡から、曲げ物と一緒に多数の木製品や銭、陶磁器、獣骨などが見つかっていますが、中でも注目される遺物は、多数の箸のような木製品で、斎串【いぐし】だろうと考えられています。こうした関連から、曲げ物も、神祭りと関係のある道具の一つである可能性も考えられますが、思い過ごしでしょうか。
郷土館では、平成5年5月31日まで、「三島のあけぼの展」と題して、このような三島の遺跡の発掘資料を展示していました。
(広報みしま 平成4年4月1日号掲載記事)
歴史の小箱(1992年度)
- (第69号) ~昔の暖房器具いろいろ~ あんか(行火) (平成5年3月1日号)
- (第68号) ~お祝いの色と形~ 水引【みずひき】・熨斗【のし】 (平成5年2月1日号)
- (第67号) ~宿場の時を告げる~ ほら貝 (平成5年1月1日号)
- (第66号) ~ふるさとの甍~ 大興寺の古瓦 (平成4年12月1日号)
- (第65号) ~初宮参り~ ヒャクヒトエの晴れ着 (平成4年11月1日号)
- (第64号) タテマエ(上棟式)の祭具 (平成4年10月1日号)
- (第63号) ~江川担庵の描いた~ 幕末の下田港 (平成4年9月1日号)
- (第62号) ~鍛冶屋の守り神様~ 金山様 (平成4年8月1日号)
- (第61号) ~煤【すす】けた一枚の看板から~ 接待茶屋 (平成4年7月1日号)
- (第60号) ~中世の武士が使った~ 「煙管【きせる】」 (平成4年6月1日号)
- (第59号) ~三代将軍 家光の泊った~ 「御殿跡之図」 (平成4年5月1日号)
- (第58号) 発掘された約500年前の曲げ物 (平成4年4月1日号)