歴史の小箱
(第26号) 世界の珍しいチョウが一堂に (平成元年8月1日号)
「世界の蝶展」で展示している蝶のコレクションは、市内に住んでおられる医師の塚田眞氏が、何年もかけて集めた世界中の貴重なものばかりです。
世界の蝶の分布は、動物地理学的に、世界を六地区に分けられます。
蝶の宝庫と言われるのは「新熱帯区」と称される南アメリカです。光沢の美しいメネラウスモルフォ(写真(1))をはじめ、言葉では言い尽くせない美しい蝶が集まっています。
世界最大の蝶トリバネアゲハのいるのは「オーストラリア区」です。ニューギニア島で最初に発見されたアレクサンドラトリバネアゲハは、余りにも巨大だったので鉄砲で撃ち落として捕獲したという伝説をもっています。
アフリカは「エチオピア区」といわれます。砂漠が多いためか、熱帯地域にも南アメリカほどには鮮やかな色彩の蝶が多くありません。ドルーリーオオアゲハ(写真(2))はアフリカ最大の蝶です。
「東洋区」もまた蝶の宝庫とされる地域です。台湾はここに属し、九州と同し位の面積ですが、この島に生息する蝶の種類は日本(約235種)より多く約350種です。
北アメリカ大陸は「新北区」といわれます。この地で産まれたオオカバマタラ(写真(3))は数千万匹が群れをなして海を渡り数千キロを飛び、メキシコ山中で越冬するそうです。
日本は、ヨーロッパとアジア大陸を含む広大な地域の「旧北区」に属します。熱帯地方のような派手な色彩の蝶はいませんが、蛾細で美しい蝶がいます。日本の国蝶オオムラサキは、その典型と言えるでしょう。
ところで、日本の江戸時代中期に刊行された図説百科辞書『和漢三才図絵」(寺島良家著)には、「蝶は蛾(が)の類也」とされるなど非常におおざっぱな分類をしています。もしかすると私たちの知識もその程度なのかも知れません。
現在、世界には、約1万8千種の蝶が発見されています。郷土資料館で、蝶による″世界の旅″をしてみませんか。
(広報みしま 平成元年8月1日号掲載記事)
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