歴史の小箱
(第33号) ふとんの歴史を探る ヨギ (平成2年3月1日号)
夜着と書きます。綿入れのふとんです。文字どおり、着物の形をしています。
寒い冬の夜、ヨギを掛けて、暖かく眠った思い出を持つ人は多いでしょう。ふとんなのに、袖があって、肩までずっしりと覆うことができ、なんとなく安心感があったものでした。
写真のヨギは、中伊豆町姫之場で収集したもので、木綿地に藍染めの鶴亀模様の唐草ふとん皮。めでたい絵柄です。おそらく嫁入り支度の一つでしょう。
ヨギはふとんの歴史を語ります。古く、日本では、ふとんに藁が使われました。藁は米の副産物として豊富に採れ、その上保温性があり、人の暮らしに様々な形で利用されたものです。藁ぶとんの時代には、ふとんは掛けるものというよりもむしろ敷くものと考えられていたから、人々は敷藁の中に埋もれるように寝て、掛けぶとんはボッコ着(古着)の重ね着で間に合わせていたそうです。ヨギが着物の形をしているのは、こうした古い時代の名域だと考えられます。また、「ふとんを着て寝る」などの言い方も、これを物語るものでしょう。
ヨギなどのふとん皮に木綿が使われ、その中身に綿を入れることが一般化するのは、綿の栽培や綿布の生産の普及と関係します。肌触りの良い木綿の感触と綿の暖かさは、藁に代わり、やがてふとんの主流になりました。 綿は日本人の民俗、すなわち衣や住まいの生活様式に大きな影響を与えました。それにもかかわらず残った形がヨギのふとんだったわけです。しかし、現在では、そのヨギもほとんど作られなくなりました。ふとんの皮に木綿以外の様々な繊維が使われ、中身にも綿の代わりに羽毛が入れられるなど、ふとんの歴史も時代とともに変貌しています。
(広報みしま 平成2年3月1日号掲載記事)
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