歴史の小箱
(第300号)稲を生活に利用するわら製品 (平成25年5月1日号)
郷土資料館では、ほぼ毎月第二日曜日に予約不要・無料の体験イベント「郷土教室」を行っています。今回は、プログラムのひとつ「わら細工を作ろう」にちなみ、わら製品をご紹介します。
米を主食としてきた日本人にとって、稲は単に食料としてだけではなく、生活全般に深くかかわってきました。その一つが、米を収穫したあとに残るわらを使って作る身の周りのさまざまな道具、わら製品でした。
では、どのような過程を経て稲はわら製品となるのでしょうか。
収穫された稲から、穂先に実った米を収穫します。その余りがわらです。このわらを乾燥させ、さまざまな用途に加工します。
わらを乾燥させても、そのままでは使えません。ワラスグリと呼ばれる作業で根本付近の下葉(ハカマ)を取り除き、茎だけになったスグリワラを使います。このスグリワラを軽く湿らせ、木槌で叩くワラウチをすることで、より加工しやすくなり丈夫な製品に仕上がります。一昔前の農家の土間にはワラウチのための石が埋めてあり、雨の日や冬の間の重要な仕事でした。
柔らかくなったわらを使って、どのような製品が作られたのでしょうか。
まず身に着けるものでは、ワラゾウリや雨風を防ぐミノ、カサがあります。ワラゾウリは人間だけではなく、農作業の大切なパートナーである牛にも履かせました。
図1牛のワラゾウリ
家の中で使う道具では、穂先だけで作るミゴボウキ(実子箒)、座布団代わりのエンザ、ナベシキなどがあります。ごはんを保温するオヒツイレは丈夫で、編み上げられた編み目は数十年たってもしっかりしています。
図2オヒツイレ
正月のお飾りも、昔は手作りが一般的でした。立派に作られたタカラブネは、ハレの日を迎える
にふさわしい美しさです。
図3お正月飾りのタカラブネ
市内でも農家が減ってきた今、わらを触ったことがないという人も多いのではないでしょうか。現在の機械化された農業では、収穫の際に稲が裁断されてしまうため、わらそのものが貴重になりつつあります。
【平成25年 広報みしま 5月1日号 掲載記事】
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