歴史の小箱
(第174号) ~小浜用水の守り神?~ 弁天さん (平成14年11月1日号)
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湧水が湧かなくなった今でも、水の神様「水神さん」の石の祠を浅間神社、白滝公園など市内のあちこちで見かけることができます。
「水神さんは何の神様を祭っているの?」と時々子供たちから聞かれますが、「竜神さん」「「弁天さん」を祭ることが多いようです。
写真の弁天さんは10年ほど前郷土資料館にやって来たものです。広小路から旧道を西へ数百メートル行った西本町で旧道のすぐ北側を流れる小浜用水を地域の人達が川ざらいしていた時のこと、泥の中にスコップに当たる硬いものがあります。引き上げて、洗ってみると端正な弁天さんでした。
大事な神様ということで、郷土資料館に預けられるようになりました。
この弁天(弁財天)の信仰は古く、インドアーリア族のインダス川の神への信仰に発しています。仏教の教えの中では、天部の神として弁舌、音楽、学問、知恵を司ると信じられており、日本には「金光明経」により伝えられました。
琵琶を持つ弁天さんが多いのは技芸天(芸術の神)と見られていたからのようです。中世末からは財宝の神様とされ、七福神の一つにかぞえられています。
また水辺に祀られることが多く、日本の三弁天は江ノ島(神奈川県)、竹生島(滋賀県)、厳島(広島県)ですが、いずれも水辺の景勝の地としても知られています。
さて、西本町の弁天さんはどのような由緒があったのでしょうか。小浜用水の水源である小浜池(楽寿園内)にはかつて弁天の祠があったという記録が残り、その流れ出た下流域にも弁天信仰が伝わっていたことが考えられます。
小浜用水は戦国時代、小田原北条氏が府中(静岡市)の今川氏と婚姻関係を結んだ時に婿引き手ものとして、小浜池の水を国境を越え駿河の村に引いた用水という説もあります。
この弁天さんはその小浜用水の守り神として祭られたのでしょうか。
(広報みしま 平成14年11月1日号掲載記事)
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