歴史の小箱
(第293号)昭和30年代の足踏み式ミシン (平成24年10月1日号)
今年度(H24年度)に入ってから、郷土資料館では昭和三十年(一九五五)代前半に製造・購入された足踏み式
ミシン二台の寄贈を受けました。一台はセイコー社製で市内の個人宅から、もう一台はブラザー社製で広小路の笑栄通りにある山本ミシン商会から寄贈していただいたものです。
日本では明治時代にミシンが普及しました。当初は輸入品でしたが、大正時代になると国内での量産が始まります。足踏み式や手回し式ミシンが昭和四十年(一九六五)代ころまで主流でしたが、その後、電気ミシン・電子ミシンなどに移り変わっていきました。
昭和三十年代ころには洋裁を習う女性が多く、昭和三十三年時点で市内には各種学校として認可を受けた洋裁学校は六校あったそうです。
今回寄贈されたミシンの持ち主も沼津の洋裁学校に通い、娘さんの洋服はほとんど手作りし、今から十年ほど前までこのミシンを使い続けていたそうです。
セイコー社製ミシン 昭和30年頃購入
もう一台については、寄贈されたミシンのベルトが切れていたため修繕をお願いした、山本ミシン商会より「うちにも古いミシンがあるから」といって寄贈していただいたものです。これ以外にも店舗には何台か古いミシンがあり、お店に入ると目にすることができます。
ブラザー社製ミシン 昭和30年頃製造
かつては多くの家庭で必需品だったミシンですが、今日では少し事情が変わってきているようです。総務省が行っている「全国消費実態調査」によれば、家庭用の電動ミシンの普及率は平成十一年は七〇・五パーセント平成十六年は六七・一パーセント、平成二十一年は六一・六パーセントとなっています。十年間で一〇ポイント近
くも下落しています。家庭の必需品の地位から転落してしまう兆しも見えるのは、生活から時間的な余裕が少なくなっているようで残念なことです。
【平成24年 広報みしま 10月1日号 掲載記事】
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