歴史の小箱
(第337号)三島宿の職業分布(平成28年6月1日号)
郷土資料館では、七月三日(日)まで企画展「三島宿と三嶋暦」を開催しています。そこで今回は三島宿界隈での職業について紹介します。
天保十三年(一八四二)の内容と推定される『三島宿街並絵図』(図1)には東海道沿いに並ぶ家々とその職業が書き込まれています。三島宿の職業分布を記した資料はほとんど残されていないため、とても貴重です。
図1『三島宿街並絵図』〈伊豆の国市(公財)江川文庫所蔵〉
記された職業をまとめたものを表(表1)にしました。宿場町らしく宿泊業や運輸業に多くの家が従事しています。絵図を詳しく見ると、宿場町の中心部には本陣・脇本陣・旅籠屋(はたごや・食事を提供する旅館)が多く、木賃宿(きちんやど・食事は自炊で料金が安い)は東部に多くあることがわかります。飲食業では東西の端に蕎麦屋があります。ま
た、三嶋大社前には茶屋が並んでおり、浮世絵『五十三次名所図会』(図2)で描かれているように、多くの客でにぎわう様子が想像されます。これらのことから、飲食業の多くも宿場町に関連のある職業であると考えられます。
区分 | 軒数 |
農業 | 106 |
製造業 | 36 |
建設業 | 15 |
卸・小売業 | 122 |
運輸業 | 38 |
宿泊業 | 86 |
飲食業 | 18 |
その他サービス業 | 15 |
無職 | 6 |
空地・空家 | 12 |
合計 | 454 |
図2『五十三次名所図会』
軒数では卸・小売業が最も多く、荒物、小間物、青物、魚、酒醤油、穀物、古着・古道具、たばこ、薬など、さまざまなものを扱う店があります。製造業には菓子、豆腐、酒造、鍛冶、紺屋(染物屋)、紙漉(かみすき)など、建設業には大工、畳職、左官などがあります。卸・小売業、製造業、建設業は広小路より西と三嶋大社より東に多く立地しています。
このように三島宿では宿場町特有の職業以外にも多様な職業が営まれていました。このことから、三島宿は宿場町としてだけでなく、近隣の村の人たちが、さまざまなものを手に入れることができる町としても重要であったということがわかります。
また、この時代の地方都市はその後背(こうはい)に多くの田畑を抱えていました。三島宿も例外ではなく、他の絵図などを見ると道路沿いに立ち並ぶ街並みの後ろに田畑が広がっているのがわかります。表1からも農業中心の家が全体の四分の一程度を占めており、三島宿では農業が重要な産業であったことがわかります。
今回は宿場町としてだけでなく、さまざまな機能をもって栄えていた三島宿の様子を紹介しました。
【広報みしま 平成28年6月1日号掲載記事】
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