歴史の小箱
(第195号) トンボの楽園 (平成16年8月1日号)
静岡県の西部、Jリーグのジュビロ磐田で有名な磐田市には「トンボの楽園」と呼ばれている桶ヶ谷沼があります。面積約7ha、周囲約2kmの沼ですが、トンボ67種類をはじめとし、多くの野鳥や植物が生息する自然の宝庫です。この沼は絶滅危惧種とされるベッコウトンボが生息している、全国的にも数少ない貴重な沼です。かつてベッコウトンボは関東から西では普通に見られるトンボでした。しかし、このトンボの好む平地の低湿地は埋め立てが進み、農薬などの乱用によって次第に減少していきました。桶ヶ谷沼でも昭和40年代の後半に埋め立ての計画が持ち上がりましたが、沼を守ろうとする方々の熱意により、現在では県の自然保護環境地域に指定され、ベッコウトンボの保護が進められています。
さて、三島におけるトンボの生息状況はどうでしょうか。源兵衛川、境川・清住緑地、中郷温水池、沢地川などでオニヤンマやシオカラトンボをはじめとする、いろいろな種類のトンボを観察することができます。昭和23年頃に茅町(現在の清住町)に住んでいた昆虫学者の朝比奈正二郎博士が、三島市や周辺のトンボを調査した記録では約70種類近くが記録されています。その後、平成8年には58種類が三島市内で確認されています。しかし、この中には、テンジクハネビロトンボなど外国や南日本から台風や季節風で運ばれてきたと思われる種や、どこか周辺の生息地から飛んできたと思われる種もあります。またサラサヤンマは、以前には日本でも一、二を争うほどの大生息地でした。三島はご存知のとおり清流豊かなまちですので、たくさんのトンボが飛び交う「トンボの楽園」になる可能性を多く秘めています。
古来より日本は「秋津島」(秋津とはトンボのこと)と呼ばれていたようにトンボの宝庫でした。トンボの楽園は人間の楽園でもあります。トンボと人間が共存できる環境について、私たちは今一度見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
(広報みしま 平成16年8月1日号掲載記事)
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