歴史の小箱
(第199号) 伊豆の家庭料理 イルカの味噌煮 (平成16年12月1日号)
最近テレビなどで、静岡でイルカを食べることが紹介されています。東京などほかの地域の人からすると、スーパーなどで「イルカ」と書いてある肉を見ると非常に驚きを感じるようです。
縄文時代の貝塚などからイルカの骨がみつかります。古代には広く全国的にイルカを食料としていたと考えられています。現在では和歌山県、静岡県、東北地方でイルカ漁を行い、食用としています。静岡県下でイルカを食べる地域は、県内全域というわけではなく、伊豆から静岡市までのようです。
静岡県でのイルカ漁は、かつて戸田村や賀茂村安良里、伊東の川奈や富戸が有名でした。沼津市重寺や口野でもよくイルカは捕れました。これらの港はそれぞれ入り口が狭く、港内が広がるという特徴を持っています。漁法はイルカが千頭、二千頭といった大群で回遊するという習性を見極めて、船団でイルカの大群を入り口の狭い港内へ追い込みます。そして遠巻きに撒いた網を少しずつせばめ、イルカを港内の浜辺に追い込みます。浜辺で待ち構えた漁師はイルカを引き上げ、鮮度を保つため血抜きをします。その血で港内が真っ赤になるほど、大量のイルカが捕れたこともしばしばだったといいます。これらは、沼津の市場で売りさばかれました。現在では、漁業と保護のため水産庁によりイルカの捕獲数が制限され、イルカ漁も伊東に限られています。
イルカの調理は、主にイルカの味噌煮です。イルカの肉を一口大に切り脂身を先に炒めます。ゴボウを加えてさらに炒め、酒、しょう油、砂糖、味噌で味付けます。ゴボウのほかにニンジン、コンニャクなどを入れる家庭もあります。身体をあたためる冬の一品です。
またイルカ肉を厚さ二センチほどに切り、しょう油のタレに漬け、天日干しにしたビーフジャーキーのようなイルカのタレも副食物として酒の肴に食べられています。
イルカ漁の行われていた地区では、イルカ供養碑が建てられています。殺生の中にも感謝をし、私たちの食生活を支えてきたといえます。
(広報みしま 平成16年12月1日号掲載記事)
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