歴史の小箱
(第200号) 家族団らんの思い出 ちゃぶ台 (平成17年1月1日号)
明治時代の中頃(1900年代)から、大都市でちゃぶ台が使われるようになり、昭和初め1925五年ころ)に全国的に広まりました。
江戸時代は身分に厳しく親子でも必ず上下があり、それぞれが別の膳を使わなければなりませんでした。一般に使われていた箱膳は、個人の食器一組をいれた箱で、食事のときは茶碗などを取り出し、皿などを乗せて食物を盛りました。食後に沢庵などで茶碗の中を拭き取りながら、茶を注いで飲み、そしてまた箱に戻し、棚にしまいました。井戸水を汲むなど、水が貴重なころは、食器を洗うことはほとんどありませんでした。
それが明治の文明開化により身分の平等意識が広まり、同じ食卓を囲むことができるようになり、また近代的な衛生観念と、水道の普及により食器を毎回まとめて洗えるようになりました。これらを背景にちゃぶ台は広まりました。
ちゃぶ台の語源は中華料理の卓袱台、開国後の大衆西洋料理店の「チャブ屋」など定かではありませんが、ひとつの食卓をみなで囲む西洋文化と、座って食べる日本文化の和洋折衷のアイデアの家具なのです。
ちゃぶ台の登場で、食卓にはさまざまな変化が生まれました。主婦は、ちゃぶ台の上に大皿でおかずを出せるようになり、家族のひとり分ずつ盛り分けていた手数が省かれるようになりました。一方食器の形や数が自由になったことから、トンカツやライスカレー、コロッケなど洋風の料理を工夫して家庭の献立に加えていきました。
また以前では、食事中の会話は人に失礼にあたるとされ注意されましたが、ちゃぶ台で顔を合わせれば自然と会話が生まれるので、なごやかに楽しい話しをするというマナーに変化していきました。
ほかに食事以外でも、子どもの勉強机、お母さんの家計簿、袋貼りなどの内職の台など家庭でさまざまなことに利用されました。ちゃぶ台の時代の暮らしはつつましく、健気さが感じられます。
ちゃぶ台はレトロなもの思われていますが、その歴史は意外と短く、誕生して百年しかたっていないのです。しかし、その持つイメージは家族の団らんやあたたかさがあり、今また若い世代にも買い求められているようです。
(広報みしま 平成17年1月1日号掲載記事)
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